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流れる水を見た。溺れゆく命の、生への渇望に共感した。
落ちてゆく闇の中、耐えきれない程の飢えを感じた。
(ああ)
もはや何もかもを忘れかけた時、涼香はそれに触れた。
それが何であるか彼女にはわからない。
しかし、それは゛全て″であった。人の、生きとし生けるものの、大地の、星の、宇宙の。
全てを巡る、大いなる環。
それに触れた涼香は知らず涙を流し、両の手を合わせていた。
大きな大きな゛何か″に触れて、今まで受けた痛みや苦しみが消えてゆく。
心の中に今まで感じたことのない暖かいものを得て、涼香は目を閉じた。
彼女は既に人の姿をとっていなかった。
全てを洗い流され、残ったのは淡い香りだけだった。彼女の名前の通り、涼やかな香り。
風にのり、香りはいずこかへと運ばれる。
そっと、その風を導く手があった。
ごおんごおんと鐘が鳴る。
全ては巡る。
それが定めなのだから。
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