2人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの、誰...で..ケホッ」
気付いていなかったが、自分はどうやらひどく喉が渇いていたらしい。
掠れた声での質問は、咳によって途切れてしまった。もう一度言い直そうと、口を開きかける。
しかし、急に前にあった気配が遠のいてしまった。パタン、と扉が閉まる音がする。
あの人が部屋から出て行ってしまったようだ。
なぜだろう、もしかしたら怒らせてしまったのかもしれない。それで無言で出て行ってしまった...。
あくまで想像でしかないのだが、もしもそれが本当だったとしたら、と思うと急に怖くなってきた。
なぜだか分からないが、今私は目が見えない。それに、ここがどこかも分からない状態だ。それなのに、ここで置いてけぼりにされて独りぼっちになってしまえば、どうなってしまうのか。
悪い考えばかりが浮かんで、どんどん心が暗くなる。
そうして、どれくらい経ったか。数秒とも、何時間とも思える時間が過ぎて、また扉が開く音がした。
不安だった気持ちが限界に達してしまったように、私は無意識にその音のほうへ勢いよく体を乗り出した。
体を支えようとしてついた右手は、そのままベッドのふちからすべり、バランスを崩して顔から床に落ちる感覚がした。
最初のコメントを投稿しよう!