歪んだ彼女の目覚め

3/7
前へ
/66ページ
次へ
「あの、誰...で..ケホッ」 気付いていなかったが、自分はどうやらひどく喉が渇いていたらしい。 掠れた声での質問は、咳によって途切れてしまった。もう一度言い直そうと、口を開きかける。 しかし、急に前にあった気配が遠のいてしまった。パタン、と扉が閉まる音がする。 あの人が部屋から出て行ってしまったようだ。 なぜだろう、もしかしたら怒らせてしまったのかもしれない。それで無言で出て行ってしまった...。 あくまで想像でしかないのだが、もしもそれが本当だったとしたら、と思うと急に怖くなってきた。 なぜだか分からないが、今私は目が見えない。それに、ここがどこかも分からない状態だ。それなのに、ここで置いてけぼりにされて独りぼっちになってしまえば、どうなってしまうのか。 悪い考えばかりが浮かんで、どんどん心が暗くなる。 そうして、どれくらい経ったか。数秒とも、何時間とも思える時間が過ぎて、また扉が開く音がした。 不安だった気持ちが限界に達してしまったように、私は無意識にその音のほうへ勢いよく体を乗り出した。 体を支えようとしてついた右手は、そのままベッドのふちからすべり、バランスを崩して顔から床に落ちる感覚がした。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加