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「そういえば、何をやっていたんですか?」
ふと聞くと、少女はどこかを指差す。その先を見ると、カラスが何かを啄ばんでいた。
小動物...子猫、だろうか?
「あれ見てたの。いいなぁ、と思って」
羨ましがることだろうか?そもそも、ああいうのは人...特に女の子が好き好んでみる
光景ではないように思える。
「カラスがいますね」
なんと応えればいいのか分からずそう言うと、少女はコクリとうなずいた。
「今からあの猫ちゃんは飛ぶんだよ。私も飛びたいな。それで、どこか行ってみたい」
どこか遠くを見る少女の横顔はとても綺麗で、それでいて哀しげだった。
カラスに食べられればやがて体の一部となり、飛べるという解釈も出来るかもしれないが...。
空を飛びたいのは、子供らしい純粋な憧れだろうか。それとも、もっと深い何かがあるのか。
そのときの僕は、彼女にそれを聞くことは出来なかった。
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