歪んだ彼の記憶

5/5
前へ
/66ページ
次へ
少女と初めて出会ってから、いつの間にか一年が過ぎようとしていた。 彼女はいつも独特の存在感を放っていて、それはひどく儚く危うげだった。 感情を表に出すのに慣れていなかったのか、最初はぎこちなかった表情も、だんだん和らいできた。 それが、自分にだけ見せてくれるものなのだと思うだけで優越感に浸れた。 彼女には僕以外頼れるものがいないのだと、なんとなく分かった。 彼女の行動や言葉の端々から彼女の境遇が伺えた。ただ、それについて指摘することはなかった。 助けたいという気持ちと、こうやって自分に依存して欲しいという暗い欲望。 しかし、事態はそう悠長なことを言っていられないものになっていた。 だから僕はその日、鈍く光るソレを持っていた。彼女を苦しめる悪鬼たちを全て消すため。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加