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歪んだ彼の
そう、僕は決意した。
彼女を助けようと。
彼女はいつも自分は幸せだと言っていた。
それなのに、あのカラスに食われた子猫のように誰からも知られない場所に行きたいという願いも持っていた。
彼女はその矛盾が彼女を歪めていることに気付いていないようだった。
明らかに家族を怖がっているのに、しきりに家族への愛を語り、
自分は独りぼっちではないといいながらも、どうしようもない孤独を背負ってその小さな背中は
いつも震えていた。
だから、僕が彼女を変えた。愛したくないものは愛さず、愛されれば素直に笑える子に。
けれど彼女の歪みは僕一人ではどうしようもないほどのものになっていたようで、
彼女が感情を見せるようになればなるほど、僕を愛してくれるようになればなるほど、
歪に見えた。それでも、そんな彼女に惹かれた。
あの日、ナイフを握って彼女の家へ行ったときの高揚。
呆気なく見つかって捕まり、彼女の前に立ったときの絶望。
あいつらは薄々気付いていた。自分達の娘・妹=玩具が、他の何かに変えられつつ
あることを。
だから、僕が家の前に来たときは狙っていた獲物がちょうど口に飛び込んできた
肉食獣のような気分になったことだろう。
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