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情けないと思った。
彼女の顔はなんというか、暗かった。
他の色が介入する余地もなさそうなほど本当に漆黒のような、そんな顔。
しばらく時間が止まったような感覚だった。
僕を掴んだ男がナイフを奪い取って、女と若い男がただ淡々とした顔でそれを見つめていた。
そして、彼女が動いた。
すっと、あまりにも自然に。
男が拍子抜けするほど自然な動作で、それが当たり前のことであるようにナイフを取って、
男の首に思いっきりガッと引っ掛けた。
鮮血が、辺りに撒き散らされる。そしてどさりと倒れた男を一瞥もせず、
女と、若い男も同じように...。
呆けていた、ほんの一瞬だった。それだけで彼女には十分だった。
びくびくと震え、そしてまったく動かなくなる生臭いゴミ3つ。
いやに冷静な頭でそれを見つめていると、
静まり返った部屋にナイフの落ちるカランッ、という音が響いた。
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