歪んだ彼の

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僕は迷わずそれを拾い上げて、 彼女の残した体温を感じるように優しくナイフの柄を握り締め、 その反対の腕を彼女に伸ばし、言った。 「縁さん...。行きましょう」 縁。僕が救えなかった少女の名前。 もしもいままでの彼女の辛い記憶が全て消えるような奇跡が起こるとしたら、 ユリさんと呼ぼう。 彼女は以前から、 『また生まれたら、今度はユリって名前が良い。好きなお花の名前。 今の名前は、皆怒鳴ったり馬鹿にしたりしながら呼ぶから嫌い』 と言っていて、それが妙に印象に残っていたから。
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