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部屋がしんとする。
意味の分からないことを言われ、守さんも困っているだろう。
どうやったら先程の発言がなかったことになるかを考えていると、守さんがこの微妙な間を終わらせてくれた。
「...それは、記憶喪失と言うことですか?」
その問いに、コクコクと頷く。なるほど、記憶喪失か。うん、それがしっくりくる。
「えと...、はい。多分そうなんだと思います。守さんとは前に会ったことありますか?...あの、全然守さんのこと覚えてなくて、もしも会ったことがあるなら、すみません...」
水を飲んだことで幾分ましになった声でそう伝えると、守さんは、謝らなくてもいい、と言ってくれた。
また、ある程度の事情だったら話せるとも。まだ守さんのことを信用していいのかは分からない。
しかし、今の現状で私が接触できたのは彼だけだ。それに、誰かを疑うのは思いのほか疲れる。
この甘えとも取れる判断によって、私がどうなるのかは分からない。それでも、
「何も分からないことが怖いんです。大切なことも忘れてしまっている気がして...。守さん、お願いです。私に、守さんが知っていることを教えてくれませんか?」
私はこの人を信じたいと思う。
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