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行き場を失くした衣類と食べかすだらけのプラスチック容器が鎮座していた。格安ボロアパートの六畳間は今やゴミ処理場のごとき惨状であった。
壁をふと見ると、不気味に照り輝く茶褐色のゴキブリたちが触覚をぴくぴくと動かしながら、まるで忍者のように縦横無尽に駆けていった。俺は缶ビールを手にとり、そのさまを肴にしつつ、乾いた唇に当てる。苦っ。うまいとは思えなかった。しかし飲まずにはいられなかった。
今日が誕生日だというのに、俺はだれからも祝われず、気づけば一日が終わろうとしている。この寂しさを紛らわすには、酒しかなかったのだ。
二浪もしてようやく手に入れた、夢のキャンパスライフと憧れの一人暮らしは、俺に『ぼっち』という称号を与え、現実の厳しさを教示した。
こんな虚しい話もあるまい。彼女も友達も作れず、だらだらと日常を浪費している。ヤケになるのも無理ないだろう。
二本目を飲み干し、三本目をとる。そして四本目と次々と空き缶を増やしていき、とうとう六本目に手を伸ばしたところで、それは突然やってきた。
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