いち

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いち

父が死んだ。多額の借金を残して。 警察の人に聞いた時、弟は泣いていたが、俺は泣けなかった。 冷静過ぎる自分に、驚いた。 多分心の何処かで、こうなることを予想していたのだろう。 死んだ父より、弟の事が心配だ。 オレと違い、弟はまだ小学5年生。 義務教育は、後4年。 オレが情報屋で集めた金では、食費とアパート代程度しか払えない。 オレが中学を卒業して、すぐ働いたとしても、学費は出せない。 これからどうやって…… ーピンポーンー 誰だ?警察の人か? 「はーい」 ーガチャー ドアを開けると、ヤクザみたいな人が立っていた。 「えっと………どちら様ですか?」 「ここ、望月の家だよな。 なんで子供がいる?」 「何でって言われましても………ここオレん家ですし……」 「望月に子供がいたのか?」 「父に何か用ですか? それなら、一週間前に死んだので居ませんよ?」 「し、死んだ!? お前よく冷静でいられるな…… ……俺は棋翼組のものだ。 望月を迎えに来たんだが……… この場合どうすればいいんだ?」 やっぱりヤクザか…… 「おい、何をしている。 さっさと望月を連れてこい」 っ!!気付かなかった。 いつの間にもう一人いたんだ!? 「く、組長!!」 コイツが組長?     
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