カップを傾けても

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そう答えたら、ナツはぶんむくれた。 「すくなっ! ひでー」 「いいじゃん、ちょっぴりだけどあったんだから」 「はあ? 俺をどこに突き落とす気だよ、おまえ」 「うーん。あ、じゃあ、ドン底まで突き落としてから持ち上げる、ってことで?」 むう、と口を尖らせて、ナツはソファにもたれた私にグイグイと肩を押しつけてきた。 「・・・・ん」 「ん?」 「んっ」 どし、と肩に体重をかけられて、私はパッと前によけて立ち上がる。 ごろんとナツがソファに転がった。 「おまえってやっぱり、ひでー。なにこれ、俺ドン底からさらに奈落の底行き?」 「ナラクってなに。・・・でも合ってそう」 私はちょっと懐かしいことを思い出した。 「運動会のリレーでバトン落とした私に、ナツ君、おかげで盛り上がった・・・ってアホな慰めをくれたことあったでしょ? あの時は、カップにかろうじてあった水が沸騰してなくなりかけたもん」 「え、なんで。おまえ、あの時泣いてただろ、俺の励ましに感動して」 いやいや、と私は首を振る。 「私のせいで負けたのが悔しくて泣いてたに決まってるじゃん。ほんと、どつきたかったわ、ナツ君」     
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