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ええ、とナツは寝転がったまま、背をまるめる。両足をかかえて、拗ねてるポーズだ。
(このひとってば、いつまでこんなふうに子供っぽいんだろう)
よいしょとモコモコ絨毯の上に座って、私はナツの額をぺちんと叩く。
「でもナツ君、長距離走で最後まで走ってたよね。あれはまあまあだった」
うそつけ、とナツはそっぽを向いた。
「運動部の奴らに置いてけぼりくって、まるポチャとかもやし連中と一緒くたにゴールしたの覚えてるっての」
「うん、見てた。ゼーハーいってて、脇開きすぎって叫びたかったもん」
「・・・・・なあ、俺どのへんから持ち上げてもらえんの」
「え、だからそのへん」
「は? どこだよ」
私はふふっと笑って、ナツの顔をのぞきこんだ。
「あの日ね、お母さんが心配してたよ」
「はっ?!」
「私、転んだあと保健室で手当てしてもらってたんだけど、ナツ君のお母さんが来たんだよね。ウチの息子ったら熱あるのに行くってきかなくてーって保健の先生に相談してた」
「うわだっせー俺」
何してくれてんだオカン、とナツは文句をこぼす。
「熱あるって知らなかったら、ただの情けないヘタレ君だったんだから、お母さんに感謝だよー? あれで、残りものっぽい水だけど甘そう、くらいにはなったかも」
「いやそれ、さっぱり持ち上がった気しねーから」
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