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「よし、じゃあこれ! 冬休み中に図書館で会ったのは覚えてる? 私が死ぬ気で図書館に突撃したら、ナツ君そこでふつーに本読んでて・・・こう、頬杖ついてさ、くせっ毛の向こうに字を追ってる目が見えて、あれはなんかカッコよかった」
ジト目でナツに見上げられて、私はあれ、と首をかしげる。
「今めちゃくちゃ持ち上げたよね、私?」
「っかんねー。おまえのツボ、俺わっかんねー」
「そうかな」
あの時、ぼんやり見惚れてる間に、ドバドバーってびっくりするくらい水入っちゃったんだけど。それはもう、カップになみなみと。
だからそのあとは、「座れば」なんていう素っ気ない言い方も、頬杖ついて見上げてくる気だるげな眼差しも、私の心臓を跳ねさせた。
「よかったね、ナツ君」
「なにが」
「顔がよくて」
「・・・・俺もう、おまえやだ。顔だけ? 俺、顔だけでおまえに結婚してもらったの?」
あはは、と私はナツの言葉を笑い飛ばした。
「顔だけで選ぶほどいいとは言ってないよー。単に好みだっただけ。いいでしょ、そのあとちゃんと好きになったんだから」
「へーへー、さようで」
「図書館でカップになみなみ入った水はもう、残りものには見えなくなった、ってとこかな」
ナツの少しつり気味の目から、ふてくされた色が消える。
「そのあとはー。みんなでボードに行った日! ナツ君はどんくさくて転びまくってたし、私が助けに行ったらマジ無理死ぬってボヤいてたけど、私に・・・見てていいかって聞いたね」
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