カップを傾けても

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うお、と言いながら、ナツが私のお腹を見た。 ゆるく巻いた髪先からのぞく形のいい眉と、ちょっとだけ色素が薄くて透き通ってみえる瞳が、私のすぐ目の前にある。 またドバーッとカップからあふれたから、ちゅっとおでこにキスしたら、ナツはソファの向こうまで逃げてった。 「どうなの、そのヘタレっぷりは」 「ば・・・っ、俺はおまえと違って繊細にできてんの。おおお落ちつかせろ! いや落ち着け、俺!」 「だからどうなの、その」 「ヘタレ言うな!」 「ナツ君は、最近流行りの出産立会いとかはやめとこうね。ぜったい、ひっくり返るから」 そんなことない、とは言わずに沈黙するナツは自分をよくわかってると思う。 私はナツに、にこーっと笑いかけた。 「ね、嬉しい?」 「・・・・・・・・」 「なに泣いてんの」 「いや・・・・」 目尻ににじんだ涙を掌でこすって、ナツはソファにへたり込んだ。 「ナツ君って、涙腺ゆるいよね。いいけど。・・・・・でね、そろそろいいかなって思わない?」 ちょうだい、と手を差し伸べたら、ナツはぽかんとその手と私の顔を見比べた。 チョイチョイと指先を曲げて催促もしてみる。 ナツの魂胆はわかってる。     
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