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学生時代の、意識し始めた頃の話なんて、ロマンチックな気分を盛り上げたかったに決まってる。でもって乗ってあげたんだから、今がクライマックスじゃん、と思う。
だけどナツは、私の予想にコケてたどりつけない上に、泣いてしまうような繊細なひとだった。
「・・・俺もうちょい、赤ちゃんできたって感動に浸りたいんだけど」
小さな声でそうこぼす。ナツの赤くなった鼻がず、と鳴った。
私は笑って立ちあがった。
「うん、いいよ。ごゆっくりー」
「は?! はあ?? 」
ココアのおかわりを作りに行こうとした私に、ナツが飛びついた。
ふわりと柔らかい髪が頬をくすぐってきて、私は笑いながらポンポンとナツの背中をたたく。
「よしよし、嬉しかったんならよかった」
「言っとくけど、誕プレはいつものケーキとこないだ欲しいっつってたスカートだからな。俺におまえみたいなサプライズを期待すんなよ」
「うん、ありがと。・・・スカート、はけなくなっちゃう前にいっぱいはくね」
「いやおまえ、産んだあと元の体型に戻そうって気は・・・」
あはは、と返事したら、ぐりっとこめかみをやられて、私はまたナツの背中を軽くたたく。
「ナツ君」
「んだよ」
「全力で愛してる」
(カップなんかじゃ、すぐにあふれちゃうくらい)
ぎゅうっと抱きしめてくれる腕がきつくなって、私も背中にまわした手にいっぱいの愛を込めた。
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