SARS

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 中国でSARSが発生した。  それに対処するべく造られた魔法の薬がある。  それがアグナマムニブだ。  土方はアグナマムニブを飲んだ。  パンシロンみたいな味だ。  胃腸にでも効くんだろうか?  さいたま新都心にあるコクーンシティに入った。  様々な文化が融合した不思議な世界だ。 「ガンベイ」  中国語で乾杯だったっけ?屋台で若いグループがはしゃいでいる。  若ハゲ男子がチキンをバグバグ食べている。  彼の名前は多分、リーだ。  「リーさん明日はどこに行きますか?」  ポニーテールの女が言った。  彼女は高梨涼子だと思う。 「涼子は元気がいいな?」  ほら、やっぱり!アグナマムニブにはヒトの名前を瞬時にインプットする成分が入っているらしい。 「ハタチですからねぇ」 「ハハッ、バンドウエリアに行こうかな?」 「あそこ、UFOがよく出るらしいですよ」  涼子は少し頭がおかしいのかも知れない。 「厚着し過ぎだよ」  リーが言ったとおり、涼子は4月だとゆーのにコートを着ている。 「寒いですからねぇ?これ着てると金が増えるんですよ」 「懐が寂しいってのか?スノーウェアでも穿けば?」 「あぁ、なるほど?」 「仕事やろうか?」  怪しいな?リーは目にクマが出来て、ゲッソリ痩せている。さらに若ハゲ、河童も腰を抜かしそうだ。  土方はリーと涼子をCCDカメラ《超小型カメラ》で撮った。   ウェアのボタンの中に仕込んである。  土方は精肉会社で働いている。  公安はハムとも呼ばれる。    必然的にハムの知識を得る。  黒岩ハムが土方の勤務先だ。  「やぁ、エルボーおかえり」  製造部長の井上が言った。 「土方の肘鉄は痛いからな?」  沖田営業部長が言った。 「沖田さん、寒いです」  黒岩ハムはダミー会社ってわけじゃない。  かつて偽装表示をしたことがあったが、賄賂を渡して難を逃れた。  沖田の前職は犬神警察署の署長だ。  井上は黒岩ハムの古参幹部だ。  資料室に入り、ウェアを脱いでボタン型カメラを装置にセットする。  データファイルからリーと涼子の画像を読み込む。前科者リストと照らし合わせる。  リーに関してはなかったが、高梨涼子は1件ヒットした。    
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