不気味な社員

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不気味な社員

 工場の1階に食堂はある。資料室があるのは地下室だ。暗証番号を入力しないと入れない仕組みになっている。  コンビニで買ったカップ麺を食べた。  社食なんてマズくて食べられやしない。  毒が入っていない保証はない。  ゴミの臭いのする中国人が麻婆豆腐を食べている。SARS撒き散らしてんじゃねぇよ。  中国のハンバーガーにはトカゲが入ってるらしい。ネームプレートには高橋とあるが、本名は王戮だ。怪しすぎる。 「高橋さん、井上部長が呼んでますよ?」  王は総務部の人間だ。    中国人に金の管理なんかさせて大丈夫かな? 「土方さん、今度飲みに行きましょうか?」  ノミじゃねぇだろうな? 「せっかくですが遠慮しておきます」 「どうしてですか?」  中国人は信用できねーんだよ! 「腹の調子が悪いんですよ」  午後9時、沖田をアパートに呼び出した。  犬神駅の裏通りにある純和風な2階建てだ。  工場まではチャリで15分ってところだ。 「こんな時間になんだ?」  沖田の本名は島公彦。  コードネームの由来は新撰組の沖田総司だ。  沖田と同じく結核で死んだらおもしろいな?   この世界では土方より沖田の方がエライ。 「総務部の高橋をご存知ですよね?」 「そんな奴いたっけ?」 「ゴルフもいいですけど、社内のことも少しは…………」  沖田にギロリと睨みつけられる。 「高橋がどうかしたのか?」 「彼は日本人ではないかも知れません」  いきなり、『彼の名前は王戮です』なんて言ったら警戒されるだろう。 『やけに詳しいが、まさか王の仲間じゃないよな?』なんて疑われかねない。  沖田が勝手に冷蔵庫を開けて缶ビールをラッパ飲み出した。  「つまみねぇのかよ?」 「切らしてます」 「買ってこいよ」 「いない間にいじられたらかなわない」 「なんだよ?エロ本でも隠してるのか?」 「高橋ですけど…………」 「話をそらすなよ?」 「そらしてませんって!」 「顔が赤いぞ?で?」 「随分前に中国に滞在してたことがありましてね?」これは嘘じゃない。「どうも、イントネーションがおかしかったんですよねぇ」  沖田がビールを飲み干し、缶をゴミ箱へ投げ入れた。ストンッ、ナイスシュート! 「わかった、詳しく調べてみよう」 「明日、パリに向かいます」 「何か分かったのか?」 「あとでメールしますよ」
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