シャンゼリゼ・ストリート

1/1

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

シャンゼリゼ・ストリート

 高梨涼子がコクーンシティーにある弁護士事務所に出入りしていることが明らかになった。  尾行班から土方のもとに連絡が来た。  弁護士か、マクシミリアンも政治家になる以前は弁護士をしていた。  貴族を名乗っていたが、実は第3身分だった。  今でゆー非正規労働者やニートと同じだ。  1700年代は売官制といって身分を金で買うことが出来た。  聖職者、貴族、第3身分の3つにランクづけされていたのだ。  いいなぁ~金を溜めて総理大臣になりたいな?  誰もが笑ってくらせるような社会にしたい。  高橋(王戮)に目立った動きは見られない。  バンドウエリアも今のところは無事だ。    シャンゼリゼ通りの並木道をスキップする。  マロニエが芽吹き、5月の爽やかな風が吹く。  シャルル・ド・ゴールド広場に聳え立つ凱旋門に心を奪われた。  マクシミリアンはパ・ド=カレー県ってところで生まれた。幼い頃に母親を失い、父親が失踪して天涯孤独になってしまう。  土方も両親をある事故によって亡くしている。  凱旋門の屋上にある展望台に昇ってみた。  螺旋階段をクルクルと昇ってゆく。 「お~シャンゼリゼ~」  日本人と思われる老婆が鼻唄している。  彼女の名前は西洞院キク。  ニシノトウインは京都の通りの名前だ。  新撰組の見廻りルートだった。  そういえばボンレスの本名は今出川遥香だったが、今出川も京都にある通りの名前だ。 「あら?日本からいらしたのかしら?」 「えっ、ええ」 「パリマラソンはすごかったわよ?ものすごい数だったわ~7月にはツール・ド・フランスがあるわ」 「パリマラソンがあるのは確か4月でしたね?」  老婆はどことなく野際陽子に似ていた。 「そうよ?あなた、どことなく堺雅人さんに似てますね~?私はよく煮物を煮ます」  面白いババァだ。 「キイハンターに出てました?」  大昔に流行った刑事ドラマだ。 「よく言われます、写真でも撮ってさしあげましょうか?」  西洞院キクがルィ・ヴィトンのバッグからチェキを取り出した。懐かしい!その場で現像できるヤツだ。だが、写真はマズイ!  キクが諜報員でないって確証はない。 「写真ですか…………」 「私みたいなお婆ちゃんじゃ嫌かしら?」 「いえ、そんなことは…………」  大丈夫かな?  土方はニッコリと微笑んだ。  カシャリッ、シャッターが炊かれた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加