ナポレオンが腹痛で…………

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ナポレオンが腹痛で…………

 土方はシャンゼリゼ通りに立っていた。  あれから8年も経ったなんてな?  井上が去年亡くなった。  死因はマールブルグウィルスによるものだった。  マールブルグウィルスは宿主を変えると凶暴化する。去年、ライオンがシャンゼリゼ通りに現れたことがあったのだが…………そのことが関係しているのかも知れない。  土方はBSEウィルスが人格化したものだった。  ルイ・ヴィトンの本社から出てきた銀髪の男をマジマジと見た。  奴こそが親父とおふくろを轢き殺した犯人、ナポレオンだ。  ホテルまで尾行した。  ウィルスに変身しビーフステーキのなかに忍び込んだ。ナポレオンはナタリーって女とディナーを楽しんでいる最中だ。 「うまそうだ」  ナポレオンが喉をゴクリと鳴らした。  早く喰え!そして悶え苦しめ!  ナポレオンが俺を切り裂き、フォークで突き刺し口の中に入れた。  ウワッ!変な匂いがする!ハミガキしてんのか!?  まぁいい奴の腹の中で繁殖してやる。  それから1ヶ月後、ナポレオンは狂牛病で死んだ。 《世界的なバイオリニストのナポレオンさんが狂牛病で亡くなりました》  ワタシはルーマニアにある知人の屋敷でニュースを見ていた。 「ナポレオンが腹を下して死ぬなんてね?」  クララが言った。  ルーマニアはその昔ローマ帝国の支配下にあった。吸血鬼伝説が残る場所でもある。  吸血鬼はコウモリが凶暴化したものとされ、ドラキュラとドラゴンは同一視されている。 「亡くなった兄貴が言ってたよ、三叉路や十字路にはバケモノが出るって」 「まさか、あんなものはおとぎ話よ」  クララは鼻で笑った。  テーブルの上には立方体の茶色い物体があった。 「それ、ゴートチーズ?」  ヤギの乳とミルクを混ぜ合わせたものだ。 「うん」 「ゴートチーズを食べるとドラキュラが寄りつかないんだよね?」 「そんな話聞いたことないわ」  クララの顔は灰色に変色していた。  超キモい!クララがまさか、あんなことになるなんて。  
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