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「これからはここがわたくしのお部屋ね」
ふふふ、と花のように姉上が笑う。
きょうだいたちが揃っていたころには見上げていたこの方を、見下ろすようになったのはいつからだったか。
姉上はただ一人の女君で、それゆえに騒動からは距離を置いていた。
そして他の者どもが別の方向を見ている隙に、誰にも気づかれぬように巧妙に策を弄した。
涙ながらに訴えられたのは、ほんの一年前のこと。
『わたくし、どうしても欲しいものがあるの。五の君、手を貸してくださらない?』
奥宮の一番奥、北の宮に住まう統治者の妻を、北の方と呼ぶ。
ついこの間まで、二の姫と呼ばれていた姉上は、これから北の方と呼ばれるのだ。
姉上は四の君のもとへ飛び込みその身を任せ、新たな命と地位を手に入れた。
「素敵だわ」
「姉上」
「このお部屋も素敵。四の君もこの部屋も手に入るだなんて、夢のよう」
うっとりと目を細めて姉上は部屋のこまごまとした部分を確かめる。
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