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国の者大方のと同じように、わたしが姉上を差し出したと、四の兄上はそう思っているにちがいない。
けれどそれは、半分しか正しくはない。
わたしが差し出したのは、四の兄上の方だ。
相手は、姉上。
四の兄上と一の兄上を引き離すのが、わたしと姉上の落としどころだったのだ。
姉上は、四の兄上と伴侶の座と奥宮を手に入れる。
幼いころから欲していたもの、すべてを。
これで一の兄上は、わたし一人のものだ。
奥宮の主は今日から新たになる。
今までは母上が主だったので、わたしも奥宮に足を踏み入れることができたが、これからは違う。
これからの主は、姉上だ。
たとえ弟であってもわたしは男で、奥宮は王の家族と女たちのすみかなのだ。
もう、二度と足を踏み入れることのない、華やかで美しい魍魎のすみか。
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