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「四のは? もういいのか?」
「四の兄上は治天の君になられたのですよ……」
三の兄上と四の兄上の、ご自分に対する思いを知っておられて、兄上はわざと毒をあおったのだ。
そこから罠を張り一人ずつ減らしていって、最終的にはわたしを囲い込むおつもりだったらしい。
ただ一の兄上のそのお考えを知ったわたしが、その毒の量を少しばかり変えておいたことと、姉上の『北の方になりたい』という思いを計り間違えたことが、兄上の致命的な誤算。
壊れた兄上をすぐにわたしの元へと思っていたのに、四の兄上が予想以上に、兄上に執着しておられたのが、わたしの誤算。
「もう、こない?」
「ええ」
「誰もいないと、寂しいのだよ」
「これからはわたしがおります」
「ほんとに?」
わたしが共にいると告げると、兄上は嬉しそうに笑う。
壊れてしまった兄上は寂しがりになって、四の兄上に身体を好きなようにされても、悦ぶばかりになってしまわれた。
けれどわたしはちゃんと知っている。
名を交わしたのは、わたしだけ。
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