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「五の君は、わたしが好きですか?」
春の日差しの中、長兄の誘いで中庭に出ての茶の時間となった。
二人で敷物を用意していると、待ち構えたように四の兄上がやってきて、二の姉上が三の兄上の手を引いて現れる。
わたしは一の兄上を独り占めできると思っていたので、少しばかり面白くない。
良くないことだとは思うけれど、顔に出てしまったのだろう。
それぞれが茶器をもって座に就くときに、一の兄上はわたしをすぐ横に座らせた。
穏やかな茶の時間が、わたしは好きだ。
小皿に分けられ銘々の手元に届けられる茶菓子。
兄上手ずからわたしの分をとってくださり、さしだされた。
お預けするかのように宙に浮いた皿を眺めて、わたしは急の質問に首をかしげる。
「一の兄上?」
「好きですか?」
ねえ、答えは?
一の兄上が言葉なく瞳でわたしに問う。
「はい、大好きです!」
「可愛いなぁ、五の君は本当に可愛い」
わたしの答えに満足そうに微笑まれた一の兄上はそういって、わたしの皿の上から苺を一つ取り上げた。
小皿に添えられた甘い練乳をまとわせて、わたしの口元に運んでくださるから、わたしは素直に口を開けてそれをいただく。
わたしは練乳がこぼれないように大きく口を開けており、苺を離した兄上の指は、わたしの歯をくすぐるように撫でて抜かれる。
「兄上ずるい。わたしは?」
わたしを甘やかす長兄を見て、すぐ上の、四の兄上が口をとがらせていう。
「四の君も可愛いよ」
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