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指に残った練乳を、一の兄上は自分の口に運んでなめとって、その指を手拭いで拭う。
そんな兄上を見ながら、姉上は四の兄上の口に焼き菓子を運び、おっとりと首をかしげて一の兄上に問うた。
「わたくしは?」
「二の姫も、三の君も、みんな可愛い」
微笑みながら一の兄上がそうおっしゃる。
「けれど、五の君の可愛らしさには負けるのではないかな」
にこにこしながらいいきって、一の兄上は優しくわたしの頬を撫でた。
「兄上、それはただ単に、五のが小さいというだけでは?」
「そうかもしれないねぇ」
仕方ないなあというように三の兄上が言った言葉に、くすくすくすと、きょうだいたちが笑う。
奥宮の中庭で、敷物をひいて茶を楽しんだ、かつての記憶。
日差しは暖かくやわらかで、きょうだいたちは優しく微笑んでいた。
侍女も侍従も後ろめたさに姿を隠すことなどなく、そっとあるがままに控えていて、わたしたちを見守っていてくれていた。
かつての、優しい記憶。
四人の兄姉たちに囲まれて、わたしの世界はなんの問題もなく安定していた。
「五の君は、わたしが好きですか?」
「ええ、一の兄上。大好きです」
優しい兄上の言葉に、わたし心から応える。
兄上。
大好きな兄上。
誰よりも、愛しているのです。
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