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情けなさをごまかすように、私はぐちぐちと文句をこぼした。
「ああ、もう、制服のスカートって結構生地が厚いのに、こんなザックリ破れちゃうもんなんだ。帰ったらお母さんに怒られちゃうよ。なんか変だと思ったんだよね。後ろの風通しがいいいような気がしてたんだ……」
そこまでぼやいたとき、私の後ろから奇妙な音がした。喉を詰まらせたときのような……。
何の音だろうと振り返ると、谷崎くんが必死に何かをこらえるように、口元を押さえていた。小刻みに肩を震わせてさえいる。
「た、谷崎くん?」
不安になっておそるおそる呼んでみた。
すると、まるでそれが合図だとでもいうように、谷崎くんは豪快に吹き出した。
「あ、あんた、おかしいだろ。か、風通し、って……」
そこまでおかしなことを言ったつもりはなかったのだけれど、何かがツボに入ってしまったらしい。
顔を赤くして息も絶えだえといった様子で、谷崎くんは笑い続けている。
え? 笑っている、って、あの谷崎くんが! ものすごく意外なものを見てしまった気がする。
笑われているのが私、ということは少し釈然としなかったけれど、それはこの際置いておくことにしよう。
私もなんとなく笑っている仲間に入りたくて、へへ、と中途半端にニヤけていた。
「あれあれ、谷崎くんは意外に笑い上戸だったのかな?」
言いつつ先生は、私のほうに何かを差し出していた。これは、カーディガン?
「これ上から羽織って帰るといいよ。丈が長いから、後ろも十分かくれるでしょ」
「ありがとう、先生」
私は感謝して、カーディガンを受け取った。
ひとしきり笑っていた谷崎くんを見ると、今はもう落ち着いているようだった。
さっきは何があんなにおかしかったんだろう、と悩んでいるような、気まずい顔をしている。顔の怖さが三割増しだ。
そんな姿をみて、今度は私のほうが吹き出しそうになってしまった。
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