第2話 きみと屋上で

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 情けなさをごまかすように、私はぐちぐちと文句をこぼした。 「ああ、もう、制服のスカートって結構生地が厚いのに、こんなザックリ破れちゃうもんなんだ。帰ったらお母さんに怒られちゃうよ。なんか変だと思ったんだよね。後ろの風通しがいいいような気がしてたんだ……」  そこまでぼやいたとき、私の後ろから奇妙な音がした。喉を詰まらせたときのような……。  何の音だろうと振り返ると、谷崎くんが必死に何かをこらえるように、口元を押さえていた。小刻みに肩を震わせてさえいる。 「た、谷崎くん?」  不安になっておそるおそる呼んでみた。  すると、まるでそれが合図だとでもいうように、谷崎くんは豪快に吹き出した。 「あ、あんた、おかしいだろ。か、風通し、って……」  そこまでおかしなことを言ったつもりはなかったのだけれど、何かがツボに入ってしまったらしい。  顔を赤くして息も絶えだえといった様子で、谷崎くんは笑い続けている。  え? 笑っている、って、あの谷崎くんが! ものすごく意外なものを見てしまった気がする。  笑われているのが私、ということは少し釈然としなかったけれど、それはこの際置いておくことにしよう。  私もなんとなく笑っている仲間に入りたくて、へへ、と中途半端にニヤけていた。 「あれあれ、谷崎くんは意外に笑い上戸だったのかな?」  言いつつ先生は、私のほうに何かを差し出していた。これは、カーディガン? 「これ上から羽織って帰るといいよ。丈が長いから、後ろも十分かくれるでしょ」 「ありがとう、先生」  私は感謝して、カーディガンを受け取った。  ひとしきり笑っていた谷崎くんを見ると、今はもう落ち着いているようだった。  さっきは何があんなにおかしかったんだろう、と悩んでいるような、気まずい顔をしている。顔の怖さが三割増しだ。  そんな姿をみて、今度は私のほうが吹き出しそうになってしまった。
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