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心の準備ができていなかった私は、飛び出すのがワンテンポ遅れてしまった。
すでに布野さんとはかなりの距離があいてしまっている。必死でついて行こうとしても、足が上手く上がってくれない。
けれど、息を胸いっぱいに吸い込むと、青空が体中に染み込んでくるように思えて、とても気持ちが良かった。
私はもう何も気にすることなく、自分のペースで足を動かし続けた。
走り終え、座って息を整えている私の隣に、リオがやって来て言葉をかけてくれた。
「真純、やったじゃん! 走れて、良かったね」
「うん、気持ち良かったよ。空と一つになったみたいだった」
「えー、なにそれ、かっこよすぎ」
「足が遅くても、言うことだけは立派ですとも」
私たちは、顔を見合せて笑った。笑い声は高く、高く、空に吸い込まれていくようだった。
そのとき、私はすっかり浮かれてしまっていた。自分の体調の変化に全く気づいてなかったのだ。
全員のタイムを計り終わり、先生が私たちに集合するよう号令をかけたときのことだ。
「先生呼んでるね、行かなきゃ」
「うん、そうだね」
リオに続いて立ち上がろうとしたとき、目の前が真っ白になった。さらに頭がきりきりと痛みだし、足下が揺れる。
しまった、急に立ち上がったからだ。そう思ったときにはもう自分を支えられなくなり、私はその場にしゃがみ込んでしまった。
「真純!」
「どうしたの? 原田さん」
リオや先生、みんなが駆け寄ってきてくれている。
私はみんなに、心配ない、大丈夫と言いたかったけれど、息を吸うだけで頭に響いてしまい、思うように声が出せなかった。
「そう、それで三月に入院して、検査をしたのね」
私を保健室に連れてきてくれた体育の先生は、私の具合が落ち着いたころ、再び様子を見に来てくれた。
「はい……でも、大変な病気は見つからなかったんです。ただ、貧血になりやすいらしくて」
言い訳のようにぼそぼそと答えると、先生は困ったような笑顔を浮かべた。
「やっぱりもうしばらく、体育をお休みしたほうがいいんじゃないかな」
「でも」
「貧血だって、病気でしょう。しっかり体調を整えて、心配がなくなってから運動しても遅くないでしょ?」
「……」
本当に心配そうな先生の表情を見ると、私は何も言えなくなってしまった。
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