第3話 きみと桜の下で

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 花びら採集に関しては、私よりも谷崎くんが上級者だったみたいだ。ピンポイントで口の中に入るなんてすごすぎる。 「どうだった? おいしかった?」 「いや、すぐ出したし。味はよくわからなかった、けど」  私の質問に答えながら、谷崎くんは口元に手をやった。肩の震えがどんどん大きくなる。これは、もしかして……  予想通り、くっと喉を鳴らし、谷崎くんは吹き出した。また笑いの波がきてしまったの? 「なんで一番に味を気にするんだよ」  谷崎くんは、苦しそうな声でツッコミを入れた。  箸が転んでもおかしい年ごろという言葉を聞いたことがあるけれど、男の子にもあてはまるんだろうか。不思議だ。  私がおかしなことばかり言っているからという可能性は、できれば否定したいところだった。 「だって、花びらが入ったケーキとかゼリーとか、あるじゃない」  言いわけをしても、谷崎くんは笑い声を抑えるのに必死で、少しも聞いていない。 「ケーキって言ったらお腹すいてきちゃったな」  谷崎くんのことはもう放っておくことにしよう。私はあきらめ気味に、独りつぶやいた。 「メシ、食ってないのか」  まさかひとり言に返事がくるとは思わなかったので、一瞬ドキリとした。  谷崎くんは何とか笑いの発作から抜け出たようで、今は普通の声に戻っている。 「うん、忘れちゃってた。今そのこと思い出した」 「忘れてたって……体に悪いだろ、それじゃ」  谷崎くんの鋭い言葉が、ぐさりと胸に突き刺さった。  彼の言う通りだ。貧血を起こして体育に出られないと泣くくせに、ご飯も食べずにいるなんて。  健康になりたいなら食事が基本なのに、我ながら矛盾している。
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