第5話 君の心の青色

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 谷崎くんがいない。  学校には来ているはずなのに。朝、昇降口で確かに彼の姿を見たのに。  池で写真を拾った次の日の朝、私は谷崎くんが登校してくるのを、今か今かと待っていた。  昨日の今日では話をしてくれないかもしれない。けれど、せめてあいさつだけでもしたかった。  それなのに、三時間目が始まろうとしているこのときになっても、谷崎くんは教室に現れない。今朝見かけたときは、一体どこに向かっていたんだろう。  とうとう、四時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。  クラスの人たちに谷崎くんのことを聞いてみたけれど、学校に来ていることさえ知らないようだった。  どこを探そう。私はとりあえず教室を出た。 「真純、なに急いでんの?」  リオがパンと牛乳を持って、こちらに歩いてきていた。売店に行ってきたんだな。相変わらず行動が早い。  私は勢い込んで、谷崎くんを見なかったか尋ねてみた。 「あー、なんか、見たかも。学校休んでると思ったらいるんだもん。びっくりしたよ」 「どこで?」 「特別教室のあたりだったかなあ。図書室とか、あの辺の方向に行ってた」 「ありがとう、リオ」  お礼をいいながら、足はすでに動き出していた。きょとんとした顔のリオに手を振り、早足で向かう。  図書室に入ると、もうお昼ご飯を終えた生徒たちが何人かいた。  そこで同じクラスの女の子を見つけたので、谷崎くんのことを聞いてみた。 「え、ううん。知らない」 「私も」  期待していた答えは返ってこなかった。  私がお礼を言って立ち去ろうとしたとき、彼女たちは話題を振ってきた。 「ねえねえ、原田さんてさ、最近、谷崎くんと仲良くない?」 「えっ?」  彼女たちの好奇心に輝く目を見るに、やっぱりそういう意味の質問なんだろう。  けれど私には縁遠い話に思えて、ぽかんと口を開けたまま、二の句が継げない。  どうやってごまかそうかと悩んでいると、話は意外な方向に進んでいた。
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