第一部 君の青色  第1話 夕焼けと、不機嫌なきみ

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 それから少しだけ時間が過ぎ、私は二年生に進級した。  始業式を終えたあと、教室の廊下にクラス割りが一斉に貼り出された。  廊下は、自分の名前を見つけてテンションも高めに話している同級生たちでごったがえしている。  私も早く新しい自分のクラスを知りたくて、さっきから探しているのだけれど、背が低いせいか、見えるのはみんなの背中ばかりだ。  つま先立ちにジャンプも加え、前が見られるベストポイントを探そうと頑張っていたとき、からかうような声で話しかけられた。 「真純(ますみ)どうしたの、こんなところで跳ねて。垂直飛びの練習かなんかやってんの?」  昨年同じクラスだったリオだ。 「そうそう、今度の体力測定ではクラスで一番を目指して……ってなんでですか」  笑って答えると、リオもにやりと白い歯を見せた。 「新学期早々ノリいいねー、真純。ほら、3組だよ。ちょうど真ん中のとこ。良かった、今年も同じクラスだね」  と指さしてくれた。 「あ、ありがとう。本当だ、同じクラス! 今年もよろしくお願いします」 「うん、こっちこそ。それはいいけどさあ、あんまりじっと上見てたり跳ねてたりしたら、また立ちくらみするよ?」  ちょっぴりいかめしい顔で、リオは私に注意をした。  私は、恥ずかしい気持ちと心配してくれて嬉しい気持ちがないまぜになったまま、リオに向かって笑いかけた。 「大丈夫だよ、リオ。ほら、さっきの始業式でも全然平気だったでしょ?」  それに、あの写真に元気を貰った、と心の中でそっと付け加える。 「うーん、まあね。本当に大丈夫ならいいけど」  リオを心配顔にさせるのはこれで終わりにしなきゃ。私は、他にも同じクラスで知ってる人がいるか探そうと提案した。  二人でクラス割の上から順に名前を見ていく。すると、見覚えのある名前がそこにはあった。  ――谷崎蒼。  胸が、大きな音をたてた気がする。  あの人だ。あの夕焼けの写真を撮った人だ。  うるさく鳴る心臓を抑えつつ、新しいクラスに移動した私は、辺りを見回しながら席についた。  落ち着きのない私をリオが不思議そうに見ていたけれど、今はどうにも、気になって仕方がない。  一体、どの人が谷崎くんなんだろう……?  気がつくと、担任の先生が出席順に名前を読み上げていた。あ行の人たちから、少し緊張したような返事が聞こえる。
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