序ノ火 決意の天火(てんか)と降り注ぐ歌声

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天空(そら)に歌声が流れる。 ただ寂しそうに、ただ悲しそうに。 ──過去なんてモノにもう捕らわれず、歩いてゆきたい。 天空に歌声が流れる。 ただただ寂しそうに。 ただただ…、悲しそうに…。 彼女は想った。 この《凛浄(りんじょう)》と呼ばれる地の、中心より低い四方の段。 十字の頂点の社──《火ノ宮》の中で、歌声が伝うように流れ、響き渡る。 ソレはただ寂しそうに、ただ悲しそうに、静かに伝う。 天空に浮く大地──《問いかけの大地》よりもさらに上空に浮く《凛浄》は、天に最も近く、建物のソノ美しき姿から、“天空ノ花”、“天の羽衣”、“天の羽根”など様々な呼び名が在った。 数多くの呼び名が在る《凛浄》だが、天空ノ巫女(ユリーシャ)──カグヤの許(もと)につく者達は、皆揃って《凛浄》と呼んでいた。
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