突然現れた

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「あー、もう! 分かりましたよ! じゃあ、なにか現物を下さい。そうですね……金を……いや待って。あなたは鐘を渡してきそうですね。では、もっと夢のある……そうだ! 空を飛ぶ道具を下さい。頭につけるタケトンボみたいなやつです」  ここまで指定すれば、ボケる事は出来ないだろう。 「タケトンボで空をですか。あはははは……実際に飛べるくらいの力があるタケトンボなんて、使った瞬間に死亡確定ですよ」  ……  …… 「夢も希望もないな!!! あなた、本当に神様なのですか!?」  再び神はショボンとした。 「高校生の進路相談で、お前はどんな夢を持っているんだと聞かれました。ギャグで空を飛びたいと言ったら……パイロットだな? 頼む、そうだと言ってくれ! ……とマジな顔で先生に詰め寄られました」 「なんの話ですか!? なんで誕生日に、意味不明な事に付き合わされるのですか!? もういいですから、凄い能力持ってるなら、自分に使って下さい!」 「自分には使えないのです。皆さんを幸せにする能力なので……」 「えっ? そうですか……すみません、言い過ぎました。じゃあ、一緒に酒でも飲みませんか? 一緒に祝ってくれるだけでも、私は嬉しいです。ちょうど、いい酒が手に入ったんですよ」  俯いていたタコは嬉しそうに顔を上げた。 「分かりました。では、酒の肴はお任せ下さい!」  タコの体が一層輝きを増す。  そして……  ……  ……  ……イカリングが五つ、次々と空から降って来た。  イカリングは、そのままベッドへとダイブする。 「ああーーー!!! ベッドに油が染み込んでいく!!! なんて事をしてくれるのですか!」 「ハッピーバースデー!」 「ハッピーじゃないですよ!」 「揚げたてですよ。お腹も満たされ、お酒も進み……」  私はタコの体を両手で鷲掴みにした。
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