AMNESIA

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 デミグラスソースがたっぷりかかったハンバーグを口に入れ、俺が言うと沙彩はとても嬉しそうに微笑んだ。 「良かった! ソースも沙彩が作ったんだよ」 「さすが未来の料理人」  沙彩は高校を出て、調理師専門学校へ通っている。  俺は昔からの趣味が高じて、ソフト開発などのプログラマーとして高校卒業と同時に働いている。 「ご馳走様でした」 「お粗末さまでした」  2人で箸を置くと、俺はテレビの電源を入れた。  丁度、ニュースで“アムネシアウィルス”の事が流れていた。 「あの蝶々、すごい綺麗なのにウィルス持ってたなんて残念だよね」  少し前に小さなニュースでしか取り上げられていなかった“記憶喪失”の事件は、あの一件だけでは終わっていなかった。  同じ蝶を見た人が次々に記憶を失ったのだ。  最近わかってきたことは、個人差はあるが蝶と接触して2日後くらいまでには発熱が始まり、その後、頭痛や嘔吐、そしてその先に記憶を失くす――こういう経緯らしかった。  何故、それらが判明したかと言うと、記憶をなくす前に、ブログで蝶を見たことや、症状を事細かに記してくれていた人がいたからだ。     
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