紫苑の彼方に、星は消ゆ

6/7
前へ
/7ページ
次へ
そして。 数え切れないほどの夜明けを繰り返し、その時は訪れる。 『ヒト』と呼ばれたそのウィルスは、『マールス』を第二の宿主に選択し、あなたが死を迎える前に感染を終えた。 私はかつてのあなたを想い描く。 美しく青い海。 揺らめく海面は光を浴びて煌めき、地平線の彼方まで続いていた。 広く澄んだ空。 雨の恵みを降らせ、時には七色の架け橋を生み、地上をずっと見守ってきた。 強く豊かな大地。 歴史を刻み、恩恵を与え、全ての事象を受け止めてきた。 「テラ・・・・・・」 私は変わり果てたあなたに呼びかける。 「・・・・・・君か」 海は枯れ果て、空は暗雲が渦巻き、大地は乾きひび割れている。 『ヒト』に侵食され、捨てられた死の星。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加