恋空

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恋空

  今日の空は、輝いていた。 まだ夏でもないのに、暑いくらいだ。 太陽が突き刺すように光を地に落とす。 教室に入ると既に女子が1人いた。 彼女は窓を開けて、風を気持ち良さそうに受けていた。 「おはよう。神崎さん。」 名前を呼ぶと彼女が振り返る。 そして、綺麗に笑った。 白く透き通るような肌に、ぱっちりとした二重の目と日本人にしては珍しい高い鼻。 そして、紅色のふっくらとした唇。 彼女はとても美しい。 いわゆるクラスのマドンナ的存在である。 「朝の眩しい太陽と、爽やかな風と、緑の匂い。  素敵だと思わない?」 そう言って彼女は手を掴んで、俺を窓の近くまで引っ張ってきた。 「せっかく早く来たんだから、一緒にさ。」 彼女が顔を窓から出したてから横に顔を出す。 丁度良い強さの風が顔に当たる。 まるで、空でも飛んでいるみたいに気持ち良い。 晴れの日は、風も気持ち良いし、太陽も暖かい。 それに何よりも、空が笑っている。 空が泣いた日は海も荒れる。 そして、海に飲み込まれて、人も涙を流す。 だから雨の日は嫌いなんだ。 「あ、宇宙。」 いつの間にか神崎さんは近くの席に座っていて、翔が教室に入ってきた。 「おはよう。」と、翔に挨拶をすると軽い挨拶が返ってくる。 翔は、神崎さんにも挨拶をした。 神崎さんは俺に見せたのと同じような笑顔で挨拶を返す。 「宇宙、神崎と来たのか。」 窓側の一番後ろ、つまり自分の席に座ると、翔が真面目な面持ちでそう聞いてきたので、思わず笑ってしまう。 神崎には聞こえてなかったようで少し不思議がっているようだ。 「そんなわけないだろ。  あの神崎さんと一緒に来れる奴がいると思うか。」 翔は神崎さんに惚れているのだろうが、正直失恋するのは目に見えている。 それがわかっていてもやめられないのが恋なのだろうけど。 「そっか、そうだよな。」 初めて恋をした相手は空だった。 両親が空が好きで、小学校低学年の時は田舎にある、天井の一部がガラスで出来た家に住んでいた。 父親の転勤で都会に来てからは普通の家に住んでいるが。 田舎に住んでいたときのあの空が見えなくなると思ったとき、胸の奥が締め付けられた。 空は、優しい女性のように俺を包んでくれている気がして、大好きだった。 朝起きる時も、夜寝るときも、上を見上げれば空が見えるあの家が大好きだった。
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