0人が本棚に入れています
本棚に追加
恋空
今日の空は、輝いていた。
まだ夏でもないのに、暑いくらいだ。
太陽が突き刺すように光を地に落とす。
教室に入ると既に女子が1人いた。
彼女は窓を開けて、風を気持ち良さそうに受けていた。
「おはよう。神崎さん。」
名前を呼ぶと彼女が振り返る。
そして、綺麗に笑った。
白く透き通るような肌に、ぱっちりとした二重の目と日本人にしては珍しい高い鼻。
そして、紅色のふっくらとした唇。
彼女はとても美しい。
いわゆるクラスのマドンナ的存在である。
「朝の眩しい太陽と、爽やかな風と、緑の匂い。
素敵だと思わない?」
そう言って彼女は手を掴んで、俺を窓の近くまで引っ張ってきた。
「せっかく早く来たんだから、一緒にさ。」
彼女が顔を窓から出したてから横に顔を出す。
丁度良い強さの風が顔に当たる。
まるで、空でも飛んでいるみたいに気持ち良い。
晴れの日は、風も気持ち良いし、太陽も暖かい。
それに何よりも、空が笑っている。
空が泣いた日は海も荒れる。
そして、海に飲み込まれて、人も涙を流す。
だから雨の日は嫌いなんだ。
「あ、宇宙。」
いつの間にか神崎さんは近くの席に座っていて、翔が教室に入ってきた。
「おはよう。」と、翔に挨拶をすると軽い挨拶が返ってくる。
翔は、神崎さんにも挨拶をした。
神崎さんは俺に見せたのと同じような笑顔で挨拶を返す。
「宇宙、神崎と来たのか。」
窓側の一番後ろ、つまり自分の席に座ると、翔が真面目な面持ちでそう聞いてきたので、思わず笑ってしまう。
神崎には聞こえてなかったようで少し不思議がっているようだ。
「そんなわけないだろ。
あの神崎さんと一緒に来れる奴がいると思うか。」
翔は神崎さんに惚れているのだろうが、正直失恋するのは目に見えている。
それがわかっていてもやめられないのが恋なのだろうけど。
「そっか、そうだよな。」
初めて恋をした相手は空だった。
両親が空が好きで、小学校低学年の時は田舎にある、天井の一部がガラスで出来た家に住んでいた。
父親の転勤で都会に来てからは普通の家に住んでいるが。
田舎に住んでいたときのあの空が見えなくなると思ったとき、胸の奥が締め付けられた。
空は、優しい女性のように俺を包んでくれている気がして、大好きだった。
朝起きる時も、夜寝るときも、上を見上げれば空が見えるあの家が大好きだった。
最初のコメントを投稿しよう!