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放課後、翔に手を引かれながと大きな音をたてて2人で走って部室に入る。
向かってきた風の感覚がまだ残っていて少し変な感じがする。
いつもは先に待っている2人は後から数分遅れて入って来た。
「今日は何の写真撮る?」
翔が声をかけ、仕切ろうとする。
そんな中、颯と天月は少しそわそわしているようだった。
どうしたのか、と声をかけようとしたが、先に翔が2人に聞いてくれた。
「2人とも、どうしたんだよ。
何か話したいことでもあんの?」
翔の質問に、颯は少しためらっているようだったが、天月が「驚かないで聞いてくれないかな。」と言った。
まるで、小説や漫画の中のキャラクターが重大な発表をするときみたいだった。
「あのさ、俺と颯、付き合うことにした。」
耳を疑った。
俺は今、何を聞かされているんだろうか。
天月が喋っているのは目で確認できたが、言葉が聞こえない。
言葉が、耳に入ってこない。
とっさに翔の方を見たけれど、翔はいたって冷静だった。
何で、何でだ。
気持ち悪いとは思わない。
けれど、天月が颯のことを、颯が天月のことを、それぞれがそんな風に見ていたなんて、信じられない。
それに、信じたくない。
だって、俺達はこの先もずっと友達だって。
ずっとずっと、仲間なんだって、そう思ってたのに。
天月と颯は違っていた。
「ごめん、帰る。」
咄嗟にそう言ってしまい、走って部室を出た。
最後に見た翔の顔はいたって真面目で冷静で取り乱していなかった。
体に当たる風が気持ち悪い。
来るときはあんなに気持ち良く感じられたのに。
晴れなのに、雨の日のコンクリートの臭いが鼻をかすめる。
大嫌いな大嫌いな雨の日どくとくの臭いが。
太陽がジリジリと照らしてくる。
俺を嘲笑うかのように。
雫が頬を伝う。
雨かと思い、空を見上げても太陽はまだこちらを見て笑っていた。
暑いから汗が出ているんだ。
そう自分に言い聞かせても、俺の心の雨は降りやまなくて、ぼろぼろと地面にこぼれ落ちていった。
家に帰ると、誰もいなかった。
走って階段を駆け上り、自分の雨で転けそうになる。
部屋に入っても、心は落ち着かず、心臓が不自然にドクドクと鳴っていた。
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