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家に近づくにつれ、懐かしい風景が増えていく。
早く父に会いたい、なぜかふとそう思った。
あんなにも嫌っていたはずなのに…。
「ただいまー」
「帰ってきたんか、珍しい」
奥から、父が出迎えてくれる。
懐かしい香りが、漂ってきた。
今はもう汚いなんて思わない。
頼もしさを感じる香りなのだ。
たけど、それを伝えることはできない。
気持ちが込み上げてきて、涙が溢れるだけ。
「お父さん、ごめんね」と言いたいのに、言葉が出てこない。
「早く上がりんさい」
短い言葉の中に、かつては感じることのできなかった優しさが含まれていることに気づいた。
溢れる涙をぬぐいながら、父の後を追う。
今日から、また近づきたい。
親孝行だってしたい。
父の誕生日という節目に、私は決意を新たにした。
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