懐かしい香り

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懐かしい風景、と言いたいけれど、ここもずいぶんと変わってしまった。 故郷を離れていた数年の間に、ずいぶんとコンビニが増えた気がする。 これも、時代の流れだろうか。 変われば変わるものだと思いながら、町を歩く。 父が好きだった和菓子を買って、見慣れていたはずの町に違和感を抱きながら、私は歩いていた。 思えば、父との思い出はあまりない。 現場で必死に働く父のことをよく知らなかった私は、「お父さん、くさい、よらないで」と言って避けてきた。 油臭く、真っ黒になった父の手を、幼い私は「汚い」と認識していたからだ。 通学時に電車の中にいるスーツ姿の男性を見るたびに、なぜ父はこんな仕事をしていないのだろうと、いつも心で恨み言をいっていたものだった。 私の中で父はかっこいい父ではなく、汚くてダサい存在でしかなかったのだ。
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