2人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、なぜだろう。
父の誕生日が近くなった頃、その父の臭いが懐かしくて、しかたなくなった。
会いたくなった。
遠く離れた場所で一人で頑張り続けて、少し疲れたのだろうか。
がむしゃらに必死に働いていて、ふと肩の力を抜いたとき、無性に父の香りが恋しくなった。
私の回りには、父のような香りが漂う人は誰もいない。
かつて憧れて、羨んでいた職業の人たちがたくさんいるのに、なぜか物足りなさを感じていたのだ。
それに気づいたとき、私は父に対して投げ掛けてきた言葉を激しく後悔した。
せめて、一言、「ごめんね」と伝えたくなったのだ。
父の好きな和菓子を買ったのは、父が何をあげて喜ぶか、想像もつかなかったから。
父が何を好むのかさえ、私は知らない。
覚えているのは、和菓子が好きだったことだけだ。
最初のコメントを投稿しよう!