懐かしい香り

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しかし、なぜだろう。 父の誕生日が近くなった頃、その父の臭いが懐かしくて、しかたなくなった。 会いたくなった。 遠く離れた場所で一人で頑張り続けて、少し疲れたのだろうか。 がむしゃらに必死に働いていて、ふと肩の力を抜いたとき、無性に父の香りが恋しくなった。 私の回りには、父のような香りが漂う人は誰もいない。 かつて憧れて、羨んでいた職業の人たちがたくさんいるのに、なぜか物足りなさを感じていたのだ。 それに気づいたとき、私は父に対して投げ掛けてきた言葉を激しく後悔した。 せめて、一言、「ごめんね」と伝えたくなったのだ。 父の好きな和菓子を買ったのは、父が何をあげて喜ぶか、想像もつかなかったから。 父が何を好むのかさえ、私は知らない。 覚えているのは、和菓子が好きだったことだけだ。
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