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そこは、荒れ果てた大地。
狼は飢えを埋めるべく、ただひたすら歩いていた。
どれだけ歩いただろう。
ある時、隻眼の狼が歩いていると、独りの少年に出逢った。
少年は当然喰われるものだと覚悟したが、隻眼の狼は襲ってこない。
狼は考えを巡らせる。
この少年の血肉は、我が気高き『飢え』を満たすことは出来るのか――。
すると、少年が恐る恐る声をかけてきた。
「めぐすり………さしますか?」
《お前、目薬とは何だ?》
少年にはそう聞こえたような気がした。不思議な感覚だった。
「目が良くなる、くすりです。僕は、めぐすりを売り歩いて、暮らしているので……」
《儂にも使えるのか》
聞こえたというよりは頭に響いているというべきだろうか。
とりあえず、薬をつけてみることにした。
《すまぬが、薬を塗ってはくれまいか?》
薬が塗り易いよう、狼は頭を垂れた。
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