清掃員のオバチャン

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清掃員のオバチャン

 清掃会社で働いてるんだけどね。アタシは若い頃から『見える』性質で、依頼先のビルだの店舗だのに行くと、見えちゃうことがよくあるワケ。  最初の頃は、何かいるなんて人に言ったら、周りに物凄く気味悪がられるし、こっちの頭を疑われることもしょっちゅうだったから、何か見えても知らん顔。何にもいませーんて態度だったんだけど、ある日、かなり性質の悪いのを見ちゃったの。  そこはオフィスビルだったんだけど、4Fだったか5Fだったかのフロアを丸ごと掃除してくれって依頼があって、同僚達と数人でピルに行ったの。そうしたら、物置みたいになってる部屋の外を通っただけで、まとわりつくような嫌ーな空気が漂ってきて、恐る恐る見たら、小さなガラス窓に人影みたいのがへばりついて、じーっとこっちを見てるのよ。曇りガラスだっていうのに、目玉がぎょろぎょろしてるのが判るんだもの。もう、怖いやら気味悪いやら!  いつもは、見えてもすぐに視線を外して気づかないふりをしてるんだけどね。ソレはもう、いるって判っちゃった瞬間からこっちに意識を向けまくりで、早く中に入れ見たいに、ドンドン扉を叩いてくるワケ。  もう、そんなのがいる部屋になんて入れやしないから、そこは他の人にお任せで、そーっと別の場所の掃除にかかったんだけど、相変わらずドアを叩く音は止まないし、嫌な空気は濃くなるし、ついには、普段は霊感なんてない同僚達も具合が悪いとか言い出しちゃって…。  さすがにどうしようもなくなって、思い切ってそこの責任者の人に訴えたの。物置部屋に悪質な幽霊がいるって。  そうしたら、その人、すぐにアタシの話を理解してくれてね。  規定の料金は払うからって、掃除はそこで終了。アタシはあえて何も言わなかったけど、何も知らないみんなですら、嫌な空気の場所だった。二度とここには掃除に来たくない、なんて言いながら帰ったんだけど…。  そこのビル、それから半月もせずに、入っていたテナントだのオフィスだのが全部撤退して、無人状態になっちゃったんだって。
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