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もしかして、あの時アタシ達がフロアに掃除に入ったから、今までギリギリおとなしくしていた悪い物達が暴れ出し、そんなことになったのかもと思ったけど、後で聞いたら、老朽化が酷いから取り壊す予定で、掃除も、その前にちょっと片づけをしておこうってことだったみたい。
それを聞いた時は色んな意味で安心したわ。
少なくとも、アタシ達…アタシがあの気味悪い霊達に気づいたせいで、変な刺激をしてしまい、ビルが廃ビルになったのかもという罪悪感はなくなったし、むしろこっちが重要だけど、ビルがなくなれば、もうまかり間違ってもあそこに掃除な行くことはないもんね。それだけでも安堵したわよ。
でも世の中って、思う程単純じゃないのよねぇ。
あれから数年。仕事で、最近できたばかりのビル清掃に行ったんだけど、新築だから見た目は凄く綺麗なのに、あちこちの空気が嫌~な感じで淀んでるの。
ここまで酷いのは、あの時訪れたビル以来だわって思ってたら、綺麗なオフィスフロアの窓に人影みたいのがへばりついてるのを発見しちゃったのね。
間違いなく、あの時感じたのと同じ視線だった。
前と違って普通に人がうろついているのに、目玉はぎょろつくわドアを叩く音は響くわで、もう、怖いを通り越してただただ呆然としちゃったわ。
でもやっぱり、怖さは麻痺しても嫌な空気は充満してるから、前は同僚だったけど、今回はさすがにアタシが具合が悪くなっちゃって。仕事を途中で放棄するのは忍びないけれど、どうしてもごめんなさいってことで帰らせてもらったの。そうしたら、直後にそのビルで火事が起きて…アタシの同僚達は全員無事だったけど、亡くなった方もたくさんいたみたい。
新聞やニュースでこの件は大々的に報道されたけど、その時、ビルのオーナーの写真を見て驚いたわ。だって、取り壊されたビルのオーナーだったんだもの。
これはアタシの当て推量だから実際どうかは判らないけど、あのオーナーさんがとんでもない業を背負ってて、持ちビルは全部、ああいうのが来ちゃう場所になっちゃうじゃないかしらねぇ。
お金はないし、他に仕事もないから、体が動かなくなるまでこの仕事を続けるつもりでいるけれど、縁起の悪い人がオーナーのビルとかには、今後、近寄りたくないものだわ。
清掃員のオバチャン…完
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