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「この封筒に、お相手の番号が書いてあります」
実は、手に取ると、
喉が
ごくりと、鳴った。
中には4番。と書かれた紙が入っていた。
あのひとだ、確か。えーと、中学校教師の。
ファッションビルの入り口に、女教師のさやかが、立っていた。
驚いたことに、さやかの方から近寄ってきた。
「高原雄二さんですね、西村さやかです。私なんかを、選んでいただいて、ありがとうございます」
うわー、さやかさんは、近くで見ても、キレイだなあ。こんな魅力的な女教師が、独身なんて、しんじられないなあ。
「まあ、私、変ですか? 中学校って、同年代のちょうど好い人いなくて。今日は、高原さんと、お会いどきて、うれしい。どうですか? これから、飲みに行きません?」
えー? 今から?
驚いたなあ、いま、会ったばかりなのに。
「いいでしょう? 北千住駅には、焼き肉の店、たくさんあるんですけど。炭火焼きは、どうですか? サクラ屋。いいでしょ」
馬刺しを取り分けながら、さやかさんの髪が、俺の頬に、当たる。
あら、
よろけて、さやかさんの手が、俺の膝の上に。にっこり、ほほ笑むさやかさんは、さっき、乾杯した日本酒で、ホンノリ桜色。
うわー、色っぽい。これで、女教師?
おれ、どうしよう?
「きのう、しちゃった」
教員がほとんどいない、6時限目が終わったばかりの職員室。
空き時間があるのは、西村さやかと、伊藤昌宏。伊藤は、音楽教員。西村さやかと、席が隣どうし。
西村は、副担にんなので、空き時間は、けっこう伊藤と、カブる。やはり、担任を持っていない伊藤も、空き時間がかなりある。
中学教師は、試験の時以外は、けっこう時間があるのだ。
「伊藤さん、今日は、もう授業ないんでしょ」
よく、知っているなあ。感心していると、
「さっ、もう、今日は帰ろうかな。伊藤さんもどお?」
あ、ああ、帰るか。
机の上の、明日の授業案を、ファイルに戻して、パソコンの電源を切る。
「伊藤さんは、家、越谷市でしょ。北千住駅に、炭火焼のおいしい焼き肉屋があるのよ。行きません?」
えー、伊藤は、少し驚いたが、断る理由もない。
ちょっとだらしない、腰回りのさやかは、もう、鞄をもって、昇降口に向かっている。
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