大須なもなも

　ついでに、星郷寺に立ち寄った。
　この納骨堂には祖母が眠っている。久し振りということは全くない。月命日だけでなく、父と喧嘩する度に母はここを訪れており、私も度々それに付き合っていた。
　だから、今日お参りする必要など全くなかったのだけれど、大須に来る時は立ち寄らねばならない気持ちになってしまう。お寺の前を素通りするのは、なんとなく後ろめたい。

　今日は、ダブルデートだそうだ。
　合コンで、さっちんが狙ったんだか狙われたんだかしたその相手と会うことになったらしいのだけれど、気後れするからついてきて、とのことだった。
　相手も友だちを連れてくると聞いている。

　さっちんは中学以来の友人だ。大学は別れてしまったものの、今でもよく遊ぶ気の置けない大切な女の子で、助けを乞われて無下にはできなかった。
　知らない人とのお喋りは苦手だったけれど、付添人同士で盛り上がる必要などない。むしろ、私の感じが悪くたってさっちんの株が上がるだけだと考えれば、どうにでもなる。

　気は乗らないながらも、一応履き馴れたデニムでなくロングスカートを履いてきた。しかし、待ち合わせが大須とのことだったので、しっかり歩けるよう靴はスニーカーだ。

　何で初デートが大須なのか。むしろ、デートなら栄じゃなかろうか。初デートのショッピングにこんなごちゃごちゃした商店街というのはいかがなものか。それともそんな意見は、デート未経験な私のキラキラ乙女チック思考なのだろうか。
　そう考えつつ、時間を潰すつもりで早めに入った商店街を歩く。待ち合わせ場所に向かいながら、遠回りを目的にふれあい広場まで歩を進め、改めてぐるりと周りを見渡した。