第1章 この世界

10/14
前へ
/16ページ
次へ
朝ごはんを食べながらアトレアは自分たちの祖先について話してくれた。 アトレアによると昔、この村には”八岐大蛇”と呼ばれる一匹の大蛇がいたそうで、その噂を聞きつけた東北の民族が恐れを抱いてその大蛇を大勢で倒しに来たそうだ。 大乱闘だったらしいのだが、八岐大蛇はその民族によって殺されてしまい、東北の民族の半数以上が八岐大蛇によって殺られてしまったらしい。 その大蛇の血と東北の民族の血が土に染みつき、長い年月が経ってこの土地から”人蛇”と呼ばれるアトリアたちの先祖が生まれたらしい。 「って言うのがこの村のみんなが知っている話な。」 にやり、と不穏な笑い方をしたアトリア。 まずい。この笑い方はなにか悪いことを考えている顔だ。 ひぃ、と真っ青になるとアトレアの笑い方はふはっと陽気な笑いに変わった。 「そうだ、今からダークエルフたちの街に行ってみないか?あそこでアリスの洋服揃えよーぜ。」 その服だけじゃ不便だろ?と軽くウインクをするアトリア。 美形だからそういう仕草も全く違和感がないのか、と思いながら行くと答える。 昨日の夜は仕方なかったが流石にこのふりふりな服で寝たりするのは皺がよる。 よし、決まりなと笑うアトリア。 そういえばアトリアはよく笑う。 笑顔が似合ってる。…なんか恥ずかしいから言ってやらないけどね。 準備もでき、アトレアが蛇姿に戻り私の腕に巻きつく。 肩掛けのバッグにはアトレアの財布が入っている。 先ほど見せてもらったのだが…すごかった。 金銀がたくさん入ってました。光り輝いていたよ。 おかげさまでバッグの中には財布しか入っていないのにずっしりと重い。 んぐぐ…と唸っているとアトレアがそのうち慣れるさと苦笑いしたような表情で脳内に語りかけていた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加