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「ほら、雷獣さーん、ごはんだよー。」
先ほどから私の手からかぶりついて離さない雷獣。
片手にイノシシの肉を持ち、目の前でプラプラ振ってみる。
すると手から口を離し、目線がそちらの方に行き、まるで猫のように飛びついて食べた。
だが、体が予想外に大きかったので私は押し倒される形になった。
「いっ…たた……!?」
目の前にあるのはもふもふ。
お腹部分のもふもふ。
これはもふもふしないという手はないであろうもふもふ。
私はそっと両手を雷獣のお腹に当て、そっと撫でる。
「ぁぁあ…っ!!」
歓喜の叫び。
あまりにも柔らかく暖かい。そしてふわふわもふもふしている。
(抱き枕にすればどんなに気持ちいいことか…!!)
想像するだけでとても癒される。
なんとしてでも懐けさせなければ…!!
5時間後、村はずれの森にて。
『アリス…お前…』
やけに困惑している表情のアトレア。
森を駆け回る雷獣に乗り、やけにハイテンションな私。
そう、実はたった5時間。5時間で懐いたのだ。
「雷獣さん、右…!そこの鳥捕まえて…!」
そう言うと雷獣は高く飛び上がり、樹の上の方に止まっていた鳥にかぶりつき、あっと言う間に捕まえてしまった。
そしてその鳥を後ろに投げ、私が受け止める。
先ほどからその作業を繰り返している。
どうやら雷獣はこの作業が楽しいようで、私の指示に従っていくにつれ私に懐いて行った。
『そろそろやめにしようか。森の生態系を崩しかねない。』
「はぁい…。雷獣さん、もうおしまいだってさ。家に帰ろ。」
楽しかったのにね、と雷獣の首にぎゅっと抱きつく。
よほど楽しかったのか、雷獣はご機嫌そうに高く飛び上がり、村に戻る。
ふわりと砂埃を上げ、着地する雷獣。
その背中から降りて、ありがとうとお礼をするとぺろっとほっぺを舐められた。
『訓練はこれで終わりだな。雷獣を戻せ。』
わかった、と返事をし、私は雷獣のおでこに手を当てる。
「汝、我を導く者。我の呼びかけに応え、美しき天界に戻らん。幻獣__雷獣」
厨二のような詠唱を唱える。
蛍のような光が雷獣を囲み、そのまま雷獣は消えていった。
「…アトレア。…これってあとで呼び直せる?抱き枕にしたいのだけれど。」
『お前そんなにもふもふが好きなのかよッ!!』
アトレアの盛大なツッコミが入った。
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