第1章 この世界

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その次の日の夜。 私はマリンセーラー、と呼ばれるワンピースのような長袖の服を着て、茶色のブーツを履き、首には紫色のマフラーを巻きアトリアは腕に巻きつかせる。 自分の部屋のベランダで、いつもはしまっている黒い羽根をバサバサッと広げ、 落ちないように作られた柵に手をかけ、体を浮かせ一気に前に力を入れる。 そこまで強くない風に乗り、リギスィー村めがけて飛行する。 風圧で目が痛そうなアトリアはなんとか目を開けながら道案内をしてくれる。 30分後、着いた、と言うアトリア。 それを合図にその周辺をぐるりと3周大きく回りながら低飛行した。 そこらじゅうにいる蛇に脅かせないようにできるだけ軽く着地する。 するり、と腕から離れるアトリアは、来い、とだけ言い、さっさと進んで行く。 進んだ先には大樹があり、その上に秘密基地のような家、世に言うツリーハウスがあった。 人が3人くらい大の字で寝そべられるくらいの家が、だ。 ご丁寧にその家までには梯子があり、大人が一人までなら登れるくらいの大きさであった。 入っていいぞと言わんばかりのアトリアがするすると私の首まで巻きついてくる。 ひんやりとする黒い鱗を感じながら足と手を梯子にかける。 ぎし、と軋む音はするが流石だ。 子供一人くらい簡単に耐えれる梯子の強さに感心しながらスイスイ登っていく。 登り終わり、家を見る。 どうやら扉はなく、その代わり扉代わりの子供一人が入れそうな窓があった。 窓といってももちろんガラス張りなどではなく、ただぽっかり丸い穴が空いていただけだけれどそれでも窓と言えるくらいの大きさはあった。 その窓をくぐり抜けて部屋を見回す。 どこで集めてきたのか藁で出来たベッドや、太い木の幹で出来た机、机よりも少し小柄な木の幹で出来た椅子。 ふふん、と言いたげなドヤ顔のアトリアがちろちろ舌を出し、こっちを見る。 ふっ、と頬を緩め笑顔でアトリアを撫でる。 この家はアトリアやその他の蛇が作ったのだろう。 お粗末だが、頑張った、と言うような表情のアトリアに胸が温かくなる。 「……アトリア…ありがとう…」 いい部屋、と言うと嬉しそうに目を細める。 そんな時、部屋の窓からシャーッと白と緑の模様が入った蛇が声をかけるかのように威嚇の声を出した。
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