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1996春
久しぶりに下北沢の劇場で芝居を見た。
演劇部での同期の信さんが参加している小さな劇団の舞台。
で、なぜか、ジローさんが、いた。。
あ、彼は、ジローさんと同じ学科だ。
知り合いだったんだ。
「おりょう?」
反射的に逃げてしまう。
後ろの方まで満員で、結局は捕まってしまった。
「終わったら、待ってて。」
耳元で囁かれた。
?
わたしは明らかに動揺している。。
待っていて、どうする。
今さら、どうするの。
「信さん待って、飲みに行こう」
いや。
信さんには、挨拶するけど、帰るから。
飲みは行かない。
「会いたかったんや。」
人混みで手を繋ごうとする。。
やめて。
不倫は、ゴメンだわ。
「去年、離婚した。やり直そ。」
は?
何いってんの?
「おりょうが、ええんじゃ。」
ばかね。
杏子から聞かなかったの?
「なーんも。」
付き合ってるひと、いるから。
「構わん。二股でも、すりゃぁえぇ。おりょうが、誰と付き合うていても、わしにゃぁ、関係ないことじゃけぇ。」
えーーーーっ!?
ジローさん、正気かい?
「信から、ハガキもろてね。東京やし。」
「おりょうにも、会えるかもしれんと思ってね。」
ふーん。。。
「ほうしたら、会えた。じゃけぇ、もう、離れとうないんじゃ。」
人混みは、変わらない。
ジローさんは、人を避けながら、位置をずらしながら、更に近寄ってくる。
後ろから抱き締めてくる。
「こうしよると、わしらが、付き合っとるようにみえるじゃろ。」
「ここ、おりょうの匂いがする。」
うなじにキスをしてくる。
立ち尽くして動けない。
なんでだろ。ジローさん。
振り返って抱き締めたいのに、、できない。
何も応えられない。
「信、待たんでええぇし、行こう。」
おいおい。
何を言い出すの。
ダメでしょうよ。
「何年ぶりかで抱き締めてゃぁのに。。」
だから、ダメ。
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