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「結衣最近また調子乗ってない?」
栄太が話しかけてくるようになってから一週間が経った、ある日の放課後のことだった。
放課後、トイレから帰って来て、教室の扉に手をかけた時、中から美香と日和の声が聞こえて来た。
…やっぱり、そう来るか。
仕方なしに、扉に背を向けてしゃがみこむ。
「栄太にまた話しかけられるようになって、いい気になってるよね。
あんなの、栄太が気ぃ使って話しかけてるだけなのにさ。」
「わかるわー、露骨に顔デレデレしてるもんね。」
…わたし、そんな顔をしていたのだろうか。
こんなの聞きたくない。
早く立ち去りたいのけど、教室に入って荷物をとらないと帰れない。
「栄太も優しすぎるんだよね。
結衣なんかほっとけばいいのに。
なんで構うんだろうねー。」
「結衣に脅されてんじゃないの?」
「うわ、ありえるー」
なんだ、それ。
脅したことなんかないっつーの。
苛々が募って、教室に入って怒鳴り込みたい衝動に駆られたけど、必死で気持ちを冷静に保つ。
間に受けるな、私。
ここで切れたら負けだ。
「もしかして栄太がまだ自分に気があるとでも思ってんじゃない?」
「うわ、結衣イタいなー」
プツン、と脳内で何かが切れる音がした。
さっきから、黙って聞いてりゃ随分好き放題言ってくれるじゃないか。
ひとこと言ってやらねば気が済まない。
教室の扉に手をかける。
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