コーヒーの魔力

3/28
60人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
「結衣最近また調子乗ってない?」 栄太が話しかけてくるようになってから一週間が経った、ある日の放課後のことだった。 放課後、トイレから帰って来て、教室の扉に手をかけた時、中から美香と日和の声が聞こえて来た。 …やっぱり、そう来るか。 仕方なしに、扉に背を向けてしゃがみこむ。 「栄太にまた話しかけられるようになって、いい気になってるよね。 あんなの、栄太が気ぃ使って話しかけてるだけなのにさ。」 「わかるわー、露骨に顔デレデレしてるもんね。」 …わたし、そんな顔をしていたのだろうか。 こんなの聞きたくない。 早く立ち去りたいのけど、教室に入って荷物をとらないと帰れない。 「栄太も優しすぎるんだよね。 結衣なんかほっとけばいいのに。 なんで構うんだろうねー。」 「結衣に脅されてんじゃないの?」 「うわ、ありえるー」 なんだ、それ。 脅したことなんかないっつーの。 苛々が募って、教室に入って怒鳴り込みたい衝動に駆られたけど、必死で気持ちを冷静に保つ。 間に受けるな、私。 ここで切れたら負けだ。 「もしかして栄太がまだ自分に気があるとでも思ってんじゃない?」 「うわ、結衣イタいなー」 プツン、と脳内で何かが切れる音がした。 さっきから、黙って聞いてりゃ随分好き放題言ってくれるじゃないか。 ひとこと言ってやらねば気が済まない。 教室の扉に手をかける。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!