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商業ビルの3階。ほかに歯医者や耳鼻科や美容室や消費者金融などが入っている、必要以上に明るいフロアは、商店や飲食店が並ぶ入る1、2階と違って閑散としていた。
「それらしき人物は見つけられませんでした」
「そうか……」
過去の男たちが恋慕を断ち切れずに接近してきた可能性を考えていた先野は、読みが外れたかな、とも思う。
「ただ……」
三条は、珍しくためらいがちに言った。
「依頼者は誰かの気配を感じてたと言ってました」
「だからそれは妄想だろう」
最初に思ったことがやはり正しかったのかもしれない。自意識過剰な依頼者の被害妄想。
「でも……わたしも感じたんです」
「だが姿は見えなかったんだろ?」
三条は、はい、とうなずく。
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