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先野は小さくため息をつく。
「わかりました。では、ストーカー探索はデートの時間になるまでの間だけにいたしましょう」
「…………わかったわ。でもそこまでよ。カレが来たら帰ってちょうだい」
「承知しました」
午後6時、待ち合わせ場所のカフェに現れたのは、30代と思しき長身の男だった。なにを聴いているのか、ヘッドフォンのコードが耳から下がっていた。
少し離れた席から観察するが、資産家や会社経営者のような雰囲気は感じられない。身なりが特別よい、というわけでもない。着ているスーツはブランドデザインでもなく、量販店で売っていそうな無難なもの。
とにかく、あまりカネの匂いがしなかった。
妙だな──とは思ったものの、何人かいる男の一人なのだろうと、無理矢理納得する。
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